2013 年 30 巻 5 号 p. 236-245
スタチンは高コレステロール血症を改善する有用な薬剤であるが, いくつかの副作用が知られている。 そのため, 常用することによって穏やかな効能を発揮する植物由来の生薬などの摂取による症状の改善が望ましいが, このような生薬が及ぼす作用機構は不明な点が多い。 そこで本研究では高コレステロール食負荷ラットにおける生薬製剤の効能及びその分子機構を検討するために, マイクロアレイ法を用いたラット肝臓の網羅的遺伝子発現解析を行った。 高コレステロール食負荷で発現が変動し, 生薬製剤飲用でその発現変動に変化が見られる44遺伝子を抽出した。 この遺伝子群には脂肪酸合成酵素やコレステロール代謝関連遺伝子であるチトクロムP450 8B1 などが含まれており, 体内の脂質恒常性維持に生薬製剤が貢献している可能性が示唆された。 また, 生薬製剤飲用群では, 非飲用群と比較して, 高コレステロール食負荷時に, コレステロール代謝過程の律速酵素であるチトクロムP450 7A1 の発現が亢進していた。 これらの結果は, 生薬製剤が高コレステロール血症の改善に寄与する可能性を示唆している。