東京女子医科大学雑誌
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原著
(転載)新生仔マウス高濃度酸素暴露肺障害モデルにおける肺胞微小血管障害の形態学的特徴
中西 秀彦
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2019 年 89 巻 Extra1 号 p. E123-E133

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抄録

早産児では,さまざまな要因で肺胞および肺胞微小循環系の発達が障害を受け慢性肺疾患(chronic lung disease:CLD)へと進行し,新生児期のみならず長期にわたる呼吸・循環障害を合併する.CLDにおけるこの微小血管障害のメカニズムを解明するために,形態学的手法を用いて超微形態評価を行った.新生仔ICRマウスを出生直後より14日間,85%高濃度酸素もしくはルームエア下に暴露させた後に,回復期としてルームエア下に7日間留置した.生後14日,生後21日の固定肺サンプルを用いて,肺胞微小循環系の超微形態解析と,分子生物学的解析,および肺高血圧の評価を行った.

高濃度酸素暴露群における肺胞毛細血管は,内腔が虚脱しており,不均一に肥厚した細胞質成分を伴う異常構造を有した血管内皮細胞を認めた.正常ルームエアコントロール群と比較して,血液空気関門は著明に肥厚しており,その成分の多くを肥厚した血管内皮細胞が占めていた.またこの微小形態異常に伴い,高濃度酸素暴露群では肺動脈中膜成分の肥厚と右室心筋重量の増大を認めた.この超微形態異常,肺動脈中膜肥厚,右室心筋重量の増大は7日間の回復期においても遷延していた.これら結果より,肺胞微小血管系における血管内皮細胞の形態異常と血液空気関門の肥厚が,肺動脈リモデリングと右室肥大と関連があることが示唆された.これら超微形態変化が,CLDに続発する二次性肺高血圧の発症機序の一因である可能性があり,さらなる治療法の検索を模索している.

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© 2019 東京女子医科大学学会

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