2019 年 89 巻 Extra1 号 p. E75-E99
リンパ管研究はリンパ管内皮細胞に特異的なマーカーの発見と共に急速に進歩した. そこで我々はリンパ管内皮特異的マーカーを発見するために, ネズミでのアジュバント (FIA) 誘導性リンパ管腫モデルを用いた. この腫瘍をマウスのリンパ管内皮抗原の供給源として用いることで, LA102モノクローナル抗体を作製した. この抗体はリンパ管内皮のみを認識し, 血管内皮を認識しない. さらに, この抗体の認識する抗原はマウスのCD90.2 (Thy-1.2) とホモログであることが分かった. また, LA102はじめ, その他の内皮細胞に特異的な抗体やレクチンを用いて, リンパ管と血管を三次元的に識別して画像化する方法を開発した. 次に, この腫瘍を腹腔中皮細胞とリンパ管内皮との関係を研究するためのモデルとして用いた. FIAを腹腔内投与後3日目で, 単層扁平な中皮細胞が立方化し, 細胞間が解離して極性を失い, さらには多層化した. 同時にポドプラニンおよびCCL2の発現が増加することで骨髄由来のCD68陽性マクロファージを呼び寄せ, FIAを取り込みながらがリンパ管腫の中に集積していた. リンパ管腫内では次第に, 色々な大きさの脂肪滴 (FIA) が細胞内で融合し, さらには細胞同士も融合して, 巨大化した脂肪摂取細胞がキメラ状の細胞集塊や濾胞様の構造を形成した. つまりこれらの構造は, ポドプラニン陽性の中皮細胞のみならず, 骨髄由来のマクロファージ, および間質の間葉系細胞などが集積してリンパ管腫を形成することが分かった. 4週以降になると, これらの細胞集塊は腹腔から脂肪を排導するために管状につながり, 機能的なリンパ管構造を形成した. 以上から, この一連の中皮細胞から脂肪摂取リンパ管腫を介してのリンパ管内皮細胞への変化はFIAを腹腔から排導するための生体防御反応の一つであると考えられ, 脂肪摂取リンパ管腫を介する中皮-内皮間形質転換の可能性を示唆している.