抄録
“病(やまい)” とか “病気になる” ことを構成している基本的事象として, 「人間の病気」と「病気の人間」があることを指摘した。前者はおもに, 病気そのものを形成している病因一症状を意味し, 後者はその病をもつ主体, すなわち病を患らい, 苦慮する人間のことを意味している。また前者は, 病囚一症状論的な自然科学的因果論をその基本にもっており, 後者は心理ないし現象学的方法論により明確にされ, それらの知見は医療的実践において統合される必然性をもつことが指摘され, その方法や問題についての概要がのべらるとともに, 医学教育における臨床心理学的意義について考察された。