抄録
4種類のCEAペプチド部分および1種類のCEA糖鎖部分に反応する5種類のモノクローナル抗体を用いて, 各組織型10例ずつ合わせて40例の肺癌組織のホルマリン固定, パラフィン切片をABC法により免疫組織化学的に検索し, 臨床的に測定された各症例の血清CEA値との相関を併せて検討した. 組織中の染色部位は5種類の抗体で明らかな違いは見られなかったが, 染色の陽性率は癌組織型により異なっていた. CEAペプチド部分に反応する4種の抗体は比較的類似した結果を示したが, 糖鎖部分に反応する抗体の陽性率は低かった. 血清CEA値上昇例では組織標本上いずれかの抗体により陽性所見を認めたが, 染色陽性の症例は必ずしも血清CEA値上昇を伴わず, ことに腺癌・扁平上皮癌に伴わないものが多かった. しかし免疫組織染色強陽性例ではすべての症例で血清CEA値著増が見られた.