抄録
雌性ラットを用いて, 250ppmの濃度の酸化エチレンを1日6時間, 週5日間, 10週間曝露し, その結果, 曝露群では体重増加の抑制を認めた. また曝露開始5週間後より失調性歩行を呈し, 10週間後では, すべて後肢の麻痺をきたした. 10週間後の末梢血液像では, 網状赤血球増多を伴う大球性正色素性の貧血を認めた. 生殖系に対する影響を調べる目的で, estrus cycleの観察を行い, 曝露群でestrus cycleの延長と周期全体に占める発情間期の割合の増加を認めた. 卵巣および子宮の重量には対照群との間に有意差がみられなかった. また卵巣のグルタチオン代謝系酵素のうち, グルタチオンレダクターゼ活性については, 対照群に比して18%の減少, グルタチオン-S-トランスフェラーゼ活性については, 30%の増加を認めた. 以上の結果より, 酸化エチレンは雌性ラットに対し, 末梢神経障害, 貧血のみならず生殖系にもある程度の影響を及ぼすことが示唆された.