抄録
大陸棚開発に必要な海中作業技術の確立と安全を目的とした海洋科学技術センターでの潜水シュミレーターを用いて実施された実験に参加し, 二度にわたり水深180mでの高圧環境が中潜時聴覚誘発電位(MLR), 短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)に与える影響を観察した. MLRは180mの急速加圧後Po成分の著明な振幅増大, Pa成分の潜時遅延, 振幅低下および180m到達後の消失をみた. しかし, これらの変化は減圧開始後90mまでに元に復した. 一方, SSEPはN9-N20間の1.2msec以内の潜時遅延がみられた. これらの結果から先に報告した150m以下ではABRに異常を示さなかった結果と考え合わせて, 180m程の急速な高圧環境は大脳, それも脳幹一大脳皮質間に何等かの機能障害を起こすが, これらの機能障害は一過性のものであることが示唆された.