高神大学手術例, 産業医科大学手術例・剖検例の中から, 肝細胞癌(HCC)109例, 胆管細胞癌(CCC)34例, 混合型肝癌4例, 肝の転移性腺癌24例を用いて, 肝細胞, 肝内胆管上皮, 癌細胞におけるCEA, EMA, TPA, keratinの発現を, ABC法により免疫組織化学的に検索した. 材料はいずれもホルマリン固定, パラプラスト包埋されたものであるが, 高神大学例は産業医大例よりも抗原性保持の点で明らかにすぐれており, 用手包埋法が減圧式自動包埋法よりも抗原性の失活を招来しないためと推定された. 腫瘍細胞における4種の抗原の発現頻度はHCCに対してCCCに有意に高く, 細胞内局在もHCCとCCCそれぞれに特徴を認めたが, 重複する所見もあり, HCCとCCCの鑑別が困難な個々の症例において, 免疫組織化学的に鑑別しようとすることには問題があると考えた. HCCに際してTPAのoncodevelopmental antigenの性格を示唆する所見が得られた.
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