Journal of UOEH
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11 巻, 4 号
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  • 保利 一, 田中 勇武, 秋山 高, 荒井 康彦
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 347-360
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    作業環境中で発生する有機溶剤蒸気の濃度を定量する方法として, 蒸気を活性炭チューブに吸着させ, 後に脱着して定量する固体捕集方法が汎用されている. 脱着には二硫化炭素などの溶媒を用いて抽出する方法が用いられるが, 一般に溶媒は有害であるため, これに替わる定量法が望まれる. 本報では, 活性炭に吸着した溶剤を, 加熱脱着により定量する方法について検討した. 溶剤が熱分解を起こさない程度の比較的低温で脱着を行い, 脱着率が低い溶剤については, その値を物質収支および吸着等温線に基づいて計算する方法を提案した. 単一成分および2成分混合溶剤系について, 数値計算による方法, 簡易解析法の2種類の加熱脱着モデルを提案し, それぞれ実験値と比較検討した. 脱着率の実験値と推算値は比較的よい一致を示し, 脱着率が低い場合でも, 脱着量の実験値と脱着量の推算値とから空気中の蒸気濃度を測定することが可能であることがわかった.
  • 金 秀吉, 河南 洋, 林田 嘉朗, 中村 正, 東野 英明, 山下 博
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 361-370
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    アンギオテンシンⅡ(AⅡ)は中枢性血圧上昇やナトリウム利尿作用を持つ. その機序としては, 交感神経活動の関与が考えられているが, 交感神経活動を直接記録して, 脳室内投与AⅡの効果を調べた研究はまだ数少なく, またそれらの結果は一致していない. そこで, ウレタン・クロラロース麻酔したラットを用いて, 側脳室内投与AⅡの腎交感神経活動(RSNA)に及ぼす効果を調べた. AⅡ投与によって, 血圧上昇とRSNAの減少が見られた. 心拍数は有意な変化を示さなかった. これらの反応の閾値は100pgであり, 持続時間は15-30分であった. AⅡの拮抗剤であるサララシンの前投与で, AⅡによる反応は有意に減弱した. 圧受容器からの求心性線維を切断したラットでも, 正常ラットと同程度のAⅡによるRSNAの抑制反応が見られた. これらの結果より, 脳室内投与のAⅡは, AⅡリセプターを介して直接RSNAを抑制すると結論される.
  • そのⅠ. 頭蓋内圧波の分類とその臨床的意義
    横田 晃, 松岡 成明, 石川 忠廣, 合志 清隆, 梶原 秀彦
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 371-381
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    頭蓋内圧亢進症状あるいは画像上脳室拡大を示した85人の患者について, 頭蓋内圧・脳波および関連生体現象を夜間8-12時間にわたって連続記録した. 頭蓋内圧連続記録によって得られた圧波をその出現様式に従って5型に分類し, それぞれの圧波型と睡眠および臨床病態との相関を検討した. 突発性に出現するA波(Ⅰ型)とepisodic B波(Ⅱ型)は慢性期の頭蓋内圧亢進状態あるいは慢性期水頭症に主として出現し, これらの患者は意識が保たれ, 脳波上もREM期を含む睡眠周期がよく観察された. 一方, B波が高圧域で持続出現する場合(Ⅲ型)あるいは中圧域で規則性・連続性に出現する場合(Ⅳ型)は, 頭蓋内出血の急性期・亜急性期患者にみられ, 種々の程度の意識障害を示し, 脳波上も正常の睡眠周期を欠いた. 頭蓋内圧が正常圧の範囲にとどまり, 圧波を欠く場合(Ⅴ型)の臨床的意義は見いだせなかった. 突発性および連続性圧波の形成機序に関して臨床的観点から考察した.
  • そのⅡ. 睡眠時の頭蓋内圧の変動
    横田 晃, 松岡 成明, 石川 忠廣, 合志 清隆, 梶原 秀彦
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 383-391
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    睡眠時の頭蓋内圧の変動を詳細に検討するために, 本研究そのⅠで突発性圧波がみられた37人を対象とした. これらの患者では睡眠周期および圧波の変動がよく観察された. Non-REM睡眠期では, 多くの場合Ⅱ期に有意な頭蓋内圧の上昇がみられたが, Ⅲ期においてもⅠ期, Ⅱ期と同様の頭蓋内圧の上昇をみることもあった. しかし, Ⅳ期では常に頭蓋内圧は他の睡眠段階よりも低値であった. 最も頭蓋内圧が上昇するのはREM睡眠期で, この時期の頭蓋内圧の上昇は突発性に出現する圧波の形成によって特徴づけられる. 今回の記録で出現したA波の88.9%およびepisodic B波の95.1%がこのREM期に一致して出現した. また, これらの突発性圧波とREM睡眠期の開始時間を検討すると, REM期の脳波所見が圧波の始まりに先行することが分かり, 圧波形成にREM期の頭蓋内環境が関与するものと推定された.
  • ―特にバセドウ病における阻害抗体(TSBAb)の出現について―
    藤平 隆司
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 393-401
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    血中に見出される甲状腺刺激阻害型抗体(TSBAb)は, 原発性甲状腺機能低下症の原因として重要であるが, 稀に抗甲状腺剤(MMI)治療後に機能低下症となったバセドウ病での出現も知られている. 今回, バセドウ病79症例において, 未治療およびMMI治療後の120検体でTSBAbを測定した. TSBAbはブタ甲状腺培養細胞を用い患者血清とTSHを同時添加して増加するcAMPの活性抑制で測定した. その結果9症例(11.4%)にTSBAb陽性のバセドウ病を見出し, また, この9例のうちの6例で未治療時にもかかわらすTSBAbの出現していることを初めて見出し, 2例の治療例では妊娠時のバセドウ病増悪時にTSBAbを認めた. TSBAbの出現した全例においてMMIによる治療中に再発を繰り返し, 薬剤による制御が困難であった. 以上よりTSBAbは機能低下症との関連のみならず機能亢進時のバセドウ病においても出現し, ATDにおける抗TSH受容体抗体の多様性を考える上で興味深い知見である.
  • 欅田 尚樹, 法村 俊之, 二村 公味子, 土屋 武彦
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    事業所で働く従業員がどのような健康意識をもち, またどのような健康水準にあるかを把握することは, 適正な労働環境設計への手掛かりとして非常に重要である. そこで在阪の某大企業の従業員を対象として1984年, 1986年, 1987年と3年にわたりTHI健康調査票を用いた調査を行い繰り返し実施によりその応答がどのように変化するのか, またその健康調査票の有効性について検討した. その結果, 調査年度の違いによる訴えの差は少なく, 性・年齢別の差, 特徴も従来の報告とほぼ合致しており検査の妥当性が示された.また心身症, 神経症の各判別値を使用することでなんらかの精神衛生上のリスクグループの把握に利用できる可能性が示唆された.
  • 松元 茂
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 411-424
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    フッ化水素酸(HF)は, 高濃度で皮膚に接触したとき局所傷害のみでなく致命的になる. 今回マウスを用いHFの塗布実験(体表面積の1/30以下)を行った結果, 短時間, 小範囲の塗布でも死亡マウスが多発した. 死因に関しては今日まで諸因子がいわれているが病理学的見地から詳細に臓器傷害を検討した報告はない. 解剖所見では肺水腫はなく肺血栓が死因として新たに注目された. 血栓は細気管支域肺動脈, 胞隔内毛細血管に散見され, 塗布面積が大きく塗布時間の長いものほど, その頻度が高く死亡率も高かった. 血小板血栓が主体をなし, 内皮細胞内水腫・空胞状拡張をきたす高度の内皮細胞間水腫などの内皮傷害を認めたが, 内皮細胞の剥離・血小板の内皮下への粘着は認めなかった. 血栓の成因として, 血栓数と内皮傷害の程度および頻度との間に相関性を認め, 内皮傷害に起因した血栓形成因子と抗因子の不均衡が考えられる. フッ素定量結果より内皮傷害へのフッ素の関与がうかがわれた.
  • 大西 晃生, 山本 辰紀, 村井 由之, 池田 正人, 杉本 英克, 三好 甫
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 425-428
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    22名の糖尿病(NIDDM)患者において, 右第一足指の足底面の振動覚閾値を測定した. 同時期に得た神経学的所見および腓腹神経伝導検査所見と振動覚閾値との関係に検討を加え, 振動覚閾値検査の臨床的位置づけを明らかにすることを目的とした. 神経学的所見に基づいた末梢神経障害(著者らの定義による, 本文参照)陽性者は22名中9名(41%)であった. 振動覚閾値の異常は22名中5名(23%)でみられた. 閾値測定不能例はなかった. 腓腹神経活動電位の振幅および腓腹神経伝導速度またはそのいずれかの異常は, 22名中16名(73%)で認められた. 7名で伝導速度が測定不能であった. これらの成績は末梢神経伝導検査が振動覚閾値検査より異常率が高いとする他の報告とよく一致した. 腓腹神経伝導検査が正常であった6名中の振動覚閾値はすべて正常であった. 振動覚閾値検査は, 末梢神経伝導検査より異常検出率は低いが, 測定不能例がなく, 末梢神経障害の経時的な病態把握に有用な検査法の一つと考えられる.
  • 徐 在寛
    原稿種別: 原著
    1989 年 11 巻 4 号 p. 429-439
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    高神大学手術例, 産業医科大学手術例・剖検例の中から, 肝細胞癌(HCC)109例, 胆管細胞癌(CCC)34例, 混合型肝癌4例, 肝の転移性腺癌24例を用いて, 肝細胞, 肝内胆管上皮, 癌細胞におけるCEA, EMA, TPA, keratinの発現を, ABC法により免疫組織化学的に検索した. 材料はいずれもホルマリン固定, パラプラスト包埋されたものであるが, 高神大学例は産業医大例よりも抗原性保持の点で明らかにすぐれており, 用手包埋法が減圧式自動包埋法よりも抗原性の失活を招来しないためと推定された. 腫瘍細胞における4種の抗原の発現頻度はHCCに対してCCCに有意に高く, 細胞内局在もHCCとCCCそれぞれに特徴を認めたが, 重複する所見もあり, HCCとCCCの鑑別が困難な個々の症例において, 免疫組織化学的に鑑別しようとすることには問題があると考えた. HCCに際してTPAのoncodevelopmental antigenの性格を示唆する所見が得られた.
  • 和田 伸一, 横田 晃, 松岡 成明, 角谷 千登士, 毛利 元彦
    原稿種別: 症例報告
    1989 年 11 巻 4 号 p. 441-447
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    大陸棚開発に必要な海中作業技術の確立と安全を目的とした海洋科学技術センターでの潜水シュミレーターを用いて実施された実験に参加し, 二度にわたり水深180mでの高圧環境が中潜時聴覚誘発電位(MLR), 短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)に与える影響を観察した. MLRは180mの急速加圧後Po成分の著明な振幅増大, Pa成分の潜時遅延, 振幅低下および180m到達後の消失をみた. しかし, これらの変化は減圧開始後90mまでに元に復した. 一方, SSEPはN9-N20間の1.2msec以内の潜時遅延がみられた. これらの結果から先に報告した150m以下ではABRに異常を示さなかった結果と考え合わせて, 180m程の急速な高圧環境は大脳, それも脳幹一大脳皮質間に何等かの機能障害を起こすが, これらの機能障害は一過性のものであることが示唆された.
  • 郡山 一明, 保利 一, 村井 由之, 二宮 元, 塚本 良樹
    原稿種別: 症例報告
    1989 年 11 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    シンナー遊びで視神経障害をきたした1例を報告した. 症例は, 17才の女性で, シンナー遊びをしていたが急性に両眼の視力障害をきたした. 入院後, 両側の視神経に萎縮がみられた. CTで両側被殻に低吸収域が認められた. シンナーの気相成分を分析したところ, メチルアルコールと酢酸メチルが検出された. これらが視力障害の発現に関与していたと考えられた. シンナーの成分と中毒症状との関連を検索する場合, シンナーを揮発させて分析することが重要であることを指摘した.
  • 森 晃爾, 海道 昌宣, 藤代 一也, 井上 尚英
    原稿種別: 短報
    1989 年 11 巻 4 号 p. 455-459
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ウイスター系雄性ラットに対し, 125mg/kg, 250mg/kg, 500mg/kgおよび1,000mg/kgの塩酸ピリドキシンを1日1回, 週5回腹腔内投与し, 精巣および精巣上体の臓器重量と各部位に存在する精子数に対する影響を調べた. その結果, 6週間後では, 500mg/kgおよび1,000mg/kg群で精巣および精巣上体の重量の著しい減少を認め, また125mg/kgおよび250mg/kg群でも有意な精巣上体重量の減少を認めた. また500mg/kgおよび1,000mg/kgの群では, 精巣および精巣上体中の精子数の著しい減少を認め, 250mg/kgでも精巣上体の尾部および体部において精子数の減少が認められた. 以上より, ピリドキシン(ビタミンB6)の大量投与は精巣に障害を及ぼすことが明らかとなった.
  • 塚本 増久
    原稿種別: 技法
    1989 年 11 巻 4 号 p. 461-479
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    蚊の幼虫では一般に成虫よりも電気泳動後の酵素活性バンドの検出が容易ではないものが多い. そこで発色をより濃くするために酵素抽出液, 反応用緩衝液の種類とpH, EDTA, 微量の金属イオンなどの添加物, 幼虫消化管除去による影響など種々の染色条件を検討した結果, かなり多くの酵素で改善が見られた. 各種の蚊幼虫の抽出液をポリアクリルアミド平板ゲル上で検討した酵素は酸化還元酵素8種, 転移酵素2種, 加水分解酵素4種およびイソメラーゼ1種で, それぞれについて改善された処法の詳細を述べ, 今後の研究に便ならしめた.
  • 保利 一, 三浦 義正, 小嶋 暁美
    原稿種別: 技法
    1989 年 11 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    酸化エチレンガス滅菌に使用されているガスは, 二酸化炭素やフロンなどとの混合ガスである. これらのガスは高圧容器(ボンベ)に充塡され, 液化ガスとして供給される. このガスの使用条件および滅菌機内のガス濃度を把握することは確実な滅菌を行う上で重要である. そこで, ガス滅菌に広く使用されている酸化エチレン20%, 二酸化炭素80%の混合ガスについて, 滅菌時に使用するガスの量をボンベの重量変化から計測するとともに, 滅菌機内のガスの濃度を経時的に調べた. 滅菌機内の酸化エチレンの濃度は使用量とともに高くなり, ボンベ内のガスの組成が変化することが認められた. また, ボンベ内に充塡されているガスのうち,最後の約12%は酸化エチレンの濃度が極端に低くなるため, 滅菌には使用できないことがわかった. この使用不能なガスの量は, 液がすべて気化した場合のボンベ内のガスの量に一致し, 気液平衡関係から, 使用回数, 使用量などボンベ内のガスの使用可能な条件を予測できることが示された.
  • ―その作用機序―
    伊規須 英輝
    原稿種別: 総説
    1989 年 11 巻 4 号 p. 487-493
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    サイコシン(ガラクトシルスフィンゴシン)は, UDP-ガラクトースとスフィンゴシンより合成され, ガラクトシルセラミダーゼにより分解される. 先天的(遺伝的)分解酵素欠損症(Krabbe病)では, ヒト, イヌ, マウスいずれにおいても, 脳内にサイコシンの蓄積が起こる. サイコシンはミトコンドリアのシトクロームCオキシダーゼ(COX)活性に対し強力な抑制効果をもつ. 精製酵素に対しては活性阻害を示さないが, 超音波処理したレシチンと"再構築"したCOXには明らかな活性抑制作用をもつことから, ミトコンドリア内膜環境変化を介した酵素活性阻害が考えられる. さらに, サイコシン類似物質の効果との比較から, サイコシン分子中のスフィンゴシン部分, 特にそのアミノ基がサイコシンの作用発現に重要と考えられる. サイコシンのCOX活性抑制は強力かつ効果発現が迅速である一方, 完全に可逆性である. 低酸素症に弱い哺乳類の脳内で強力な細胞呼吸抑制能力をもち得る物質が生成されていることは注目すべきことのように思われる.
  • 山村 譲
    原稿種別: 総説
    1989 年 11 巻 4 号 p. 495-504
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    芳香族アミン類に曝露した労働者に発生する膀胱癌が最初に報告されてから一世紀になる. この間に主要先進国では発癌性アミン類の製造禁止等の対策がとられ, 日本でも昭和47年に労働安全衛生法が施行され発癌性アミン類の製造と使用がともに禁止された. 最近の報告では, 過去に発癌性アミンに曝露した作業者の膀胱癌発症のリスクは数倍から数十倍で, 量反応関係の認められる報告が多い. 今後の問題として, benzidineや2-naphthyl-amine以外の芳香族アミンの発癌性, 染料曝露により体内で代謝されて生じる発癌性アミン, 発展途上国からの輸入製品に含まれる発癌性アミン等がある. また, 膀胱癌発生のリスクが高いと報告された職業は, 化学, 染料工業以外では皮革工業, ゴム工業, 印刷, 織物, 美容, トラック運転等がある. これらの問題を解決するには, 疫学や中毒学と臨床医学その他の分野との協力が不可欠である.
  • 中野 信子
    原稿種別: 人間学
    1989 年 11 巻 4 号 p. 505-519
    発行日: 1989/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    聖書物語を再話として再構築する試みは,洋の東西を問わず, あまたの虚構作家たちを魅了してきたが, 中には聖書が信仰の書であることを忘れて, 狂言綺語を弄し偏頗な考えを押しつけてくる作品も少なくはない. しかしその中にあってその再構築が, 作者のリアリティとみごとに共震しあっている例も見逃すことはできない. R. Gravesの聖書再話もその一つである. 聖書に対する異端と懐疑を出発点として, やがて神秘的なそれらの内面化を通して異端を超えて行ったGravesの創作プロセスは, その過程に作用したパラメーターを知るために, 貴重な手懸りを与えてくれるように思う. 彼の最初の小説 My Head ! My Head ! が, どういうパラメーターの作用により, 単なる借景小説の枠を超えて詩人の中に内面化をもたらしたのか, 創作のメンタルプロセスに光を当てることにより, できるだけ仔細な考察を試みてみた.
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