抄録
本論文は, 1990年, 英国の王室医師学会産業医学部会による招聘講演(Lucas Lecture)として発表したものである. 我が国の労働衛生について8世紀まで遡り, その間の変遷について総括したものである. また,労働基準法およびその施行による成果や問題点について記載する. 1988年の労働安全衛生規則の改正を詳述し, 問題点として大企業と中小企業間における産業保健サービスの大きな格差を述べる. 最後に, 1978年に産業医科大学が産業医学(産業保健科学)の進展と産業保健従事者, 特に, 産業医の養成を目的として設立されたことを紹介する. そして, 専属産業医の資質についての制度を至急整備する必要性があることを指摘する.