超強磁場の生物学的効果を, ヒトTリンパ球の細胞増殖能および放射線感受性等を指標として調べた. 末梢血より分離直後のPHA刺激培養下のT細胞は, 6.3T(超伝導磁石)定常磁場への3日間の曝露(通常の培養と同等な温湿度)で, 細胞増殖率が対照培養の約63%に抑制された. 一方, 対数増殖期のT細胞に対しては連続3日間の曝露でも, 対照培養の80-90%と増殖抑制効果は微弱であった. 放射線との複合作用に関しては, 約24時間6.3T磁場に曝露したT細胞の放射線感受性が, D37値で1.3Gyと対照群の1.9Gyに比し高感受性を示し, さらに, 亜致死障害の回復比も対照群の約75%に抑制された. これらの磁場効果は, 4Tの定常磁場でも同様に認められたが, 2Tでは有意な影響は見られなかった. 4-6.3Tの超強磁場でみられた磁場の生物学的効果は, 細胞代謝や酵素活性の阻害など一過性的な機能的変化によるものと思われる.