抄録
口腔癌切除後, 切除縁に腫瘍が残存しているか否かを全ての切除面について検討するため, 凍結切片による評価(Mohs法)を3名に試みた. その結果, 新鮮材料では切片の切り出しが困難, 手術時間が延長するなど, 定常の検討法としては適切でないと思われた. そこで, ホルマリン固定後の手術材料を検討する方法を8名に行った. パラフィン切片で評価する方法は凍結切片利用時の欠点を補うことができるが, 腫瘍の残存が明らかになっても直ちに再手術ができないという欠点がある. パラフィン切片を評価した2名に腫瘍残存が認められた. また, 全切除面に腫瘍残存が認められず, 再発した1名を経験した. 本症例では, 腫瘍の不連続性発育を示唆する所見があり, このような場合は放射線を主とする追加治療を考慮する必要がある. また, T4腫瘍, 歯肉や硬口蓋の悪性腫瘍では全切除縁の十分な評価は困難となる. 以上のような制限があるが, 実際的な腫瘍残存の検討方法と考える.