抄録
1987年度および1991年度の福岡県の「国民健康保険事業」報告書, 「老人保健事業」報告書, 「衛生統計年報」を基礎資料として, 老人医療費に関連する要因について県内の97市町村のデータをもとに分析を行った. その結果, 老人保健法に基づく基本健診受診率が老人一人あたりの入院医療費および入院外医療費と有意の負の相関を持つことが示された. 医療費の3要素別の分析によると, この負の相関は, 主として医療機関への受診率の低下によるものであった. このことは老人保健法に基づく基本健診が医療機関受診の代替効果を持つことを示唆している. また, 一方でこの両者の関係は第3の要因を介した見かけのものである可能性もある. 今後, この両者の関係のメカニズムを明らかにするために, ミクロレベルでの分析が必要であると考えられる.