抄録
産業ストレスを生じる要因として, 職業・職場要因, 個人的要因, 社会的要因などが考えられる. これらの要因により心身の健康障害が起こり, 心療内科を受診する患者は年々増加している. 本研究では心療内科を受診した患者796人の職業の有無, 職種, 疾患の種類, 発症因子を調べ, 有職者については産業ストレスの関連を調べた. 有職率は男62.6%, 女28.1%と男が高かった. 職種別では学生や主婦を除くと事務職, 現業・技能職, 医療職などが多かった. 疾患別では気分障害, 不安障害, 神経筋肉疾患などが多かった. 有職者の発症要因別では男は職業・職場要因が関与するものが56.3%と多く, 女では個人的要因が主の者が42.4%と最も多かった. 以上の結果から有職者の半数近くは心身症や精神疾患の原因として産業ストレスが関連していることが示唆された. これらのケースでは, 職場の上司・同僚, 産業医などと連携した心身医学的治療が重要と考えられる.