Journal of UOEH
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ラットにおける1-Bromopropaneの神経毒性
大西 晃生石田尾 徹笠井 孝彦嵐谷 奎一保利 一
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1999 年 21 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

フロン代替物質として用いられている1-bromopropane (1-BP)の神経毒性について,動物実験による検討を加えた. 8頭の実験群ラットでは,4週間にわたり,吸入曝露チェンバー内で1500 ppmの1-BPに1日6時間,週5日間曝露した. 8頭の対照群ラットでは,実験群と同様のチェンバー内で清浄空気に曝露した. 曝露第4週間目の後半には,対照群ラットとは異なり,実験群ラットすべてが失調性歩行,体重の減少を示した. 曝露4週間目の終わりに両群各ラットを深麻酔下で灌流固定し,神経系の組織病理学的検討を行った. 腓骨,腓腹両神経において,対照実験両群間で軸索変性の出現頻度に統計学的な有意差は認められなかった. 小脳では,虫部および半球部のいずれにおいても,Purkinje細胞の変性所見が実験群で対照群より高頻度で認められた(P<0.05). 第5胸髄および第3頚髄後索の髄球の出現頻度および延髄薄束核の軸索腫大の出現頻度について,対照,実験両群間に統計学的な有意差は認められなかった. 失調性歩行は,1-BPの曝露による小脳Purkinje細胞の変性によって生じたと判断された. しかし,末梢神経,脊髄後索,延髄薄束核における1-BPの曝露による神経線維の変性所見は明らかでなかった. 実験終了時の第4週間目の終わりに,実験群ラットは体重の減少,著明な活動の低下を示し,より長期の曝露は困難と判断された. それ故,1-BPの末梢神経毒性の研究には実験条件の再検討が必要である. なお,実験群ラットでは精細管,精子細胞に異常が認められた.

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© 1999 産業医科大学
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