Journal of UOEH
Online ISSN : 2187-2864
Print ISSN : 0387-821X
ISSN-L : 0387-821X
脳神経救急と脳神経外科における高気圧酸素治療の現状
合志 清隆
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 25 巻 4 号 p. 419-433

詳細
抄録

脳神経救急と脳神経外科の領域での高気圧酸素(HBO)治療の現状と課題について文献レビューを行った. 前者で最も多い疾患は虚血性脳血管障害であるが, 超急性期の脳梗塞には可能性の高い治療手段と判断した報告がある. その他の脳神経救急疾患では脳脊髄外傷, 神経系の減圧障害や一酸化炭素中毒などに用いられている. 後者の脳神経外科疾患では, 悪性脳腫瘍に対してHBO治療後の放射線治療で生存期間の延長が報告されているが, この方法を再発性と脳幹部の神経膠腫での定位的放射線治療に試みている. さらに, HBO治療が白金製剤やニトロソウレア剤の作用を増強するが, 特にcarboplatinの治療効果の改善が報告されている. また, 定位的放射線治療の最大の副作用である放射線壊死も多くがHBO治療にて制御可能となってきている. 脳脊髄の手術後感染でも, 併用治療によって良好な結果が得られている. 脳神経救急と脳神経外科領域において, HBO治療は重要な治療手段になっている. しかし, 有効性をより確実なものにするには, 多施設共同研究にて高い水準の科学的根拠を示すことが重要である.

著者関連情報
© 2003 産業医科大学
前の記事 次の記事
feedback
Top