2004 年 26 巻 4 号 p. 443-450
症例一(症例二の三女, 28歳)は, 平成12年9月長男を出産, 翌年1月より下肢の浮腫, 労作時の呼吸苦が出現. 平成13年5月初診時, 心拡大・肺うっ血が認められ, 心電図上右室負荷, 心エコーにて, 右室の拡大, 左室の圧排を認めた. 肺換気血流シンチグラフィーおよび心臓カテーテル検査の結果, 原発性肺高血圧症(PPH)と診断された. 利尿剤などの投与により, 改善を認め退院となったが, 1ヵ月後肺高血圧crisisのため死亡した. 症例二(症例一の母, 60歳)は, 平成13年5月より, 症状が出現, 症例一と同様の所見を認め, 内服加療により症状軽快し経過観察中である. PPHは稀な疾患であり家族性の報告も少ない. 長女の場合も症例一と同様に, 第一子出産後, 肺高血圧症のため死亡した. 症例二は, 緩徐な経過で発症したと考えられる. 今回我々は, 家族性原発性肺高血圧症の二症例を径験したので報告する.