Journal of UOEH
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ヒト・ウィルス肝炎におけるリンパ球内サイクリック・ヌクレオチドの動態と宿主免疫機構との関連
田岡 賢雄遠藤 高由
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1981 年 3 巻 4 号 p. 363-373

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抄録

1968年Lichtensteinらがリンパ球内サイクリックAMPが生体内の免疫機構の調整に関与している可能性を示唆して以来, この問題については今日までに多くの研究があり, サイクリックAMPレベルの増加はT細胞機能に対して抑制的に, PHA刺激後のサイクリックGMPレベルの増加はT細胞機能に対して促進的に働くことが明らかとなり, サイクリックAMPとサイクリックGMPとは生体の免疫機構に対し相互に拮抗的ないし相補的に作用することが明らかとなった. しかし, ヒト・ウィルス肝炎についてこの点を検討した報告は未だなく, この点を中心に追究するとともに, 合わせて血清免疫抑制因子との関連についての基礎的検討を行った. 著者の成績によればT-細胞機能の低下がみられる慢性活動性肝炎では慢性非活動性肝炎や健常例に比して, T-リンパ球内サイクリックAMPの増加, PHA刺激後サイクリックGMP増加率の低下が認められ, 細胞性免疫の抑制が示唆された. この場合HBsAgの有無との間には関連はみられなかった. 一方, in vitroの実験ではT-リンパ球内サイクリックAMP含量はPFC%よりみた抑制性T細胞(サプレッサーT, Ts)機能とよく並行しており, またリンパ球培養液中に添加した細胞性免疫抑制因子と考えられているα1-酸性糖タンパク(α1-AG)やα2-マクログロブリン(α2-M)の濃度ともよく並行しており, これら培養液中の血清抑制因子がリンパ球内ヌクレオチドの含量に大きな影響を与えていることが判明した. 以上, ヒト・ウィルス肝炎においてもT-リンパ球内サイクリック・ヌクレオチドはその増減を介してT細胞機能を調節し生体の免疫機構に関与していることが強く示唆された.

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© 1981 産業医科大学
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