Journal of UOEH
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感染症の宿主遺伝要因-抗酸菌感染症と亜急性硬化性全脳炎に対する免疫遺伝学的アプローチ-
楠原 浩一
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2010 年 32 巻 2 号 p. 177-194

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抄録
感染症の宿主遺伝要因は「微生物の侵入や免疫応答に関わる遺伝子の塩基配列の違い(遺伝子変異・多型など)」として説明される. 我々は, 抗酸菌感染症と亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis:SSPE)の宿主遺伝要因に関する研究を行い, 弱毒抗酸菌であるBCGによる骨髄炎の遺伝的背景として本邦では優性遺伝形式をとるinterferon(IFN)-γ受容体1部分欠損症の頻度が高いこと, 同じinterleukin(IL)-12/IFN-γ経路の分子であるIL-12受容体β1の遣伝子多型が日本人における結核の発症および重症化の要因であること, SSPEの発症には, 自然免疫関連ではmyxovirus resistance protein A(MxA)とtoll-like receptor 3(TLR3), 獲得免疫関連ではIL-4とprogrammed cell death 1(PD-1)の遺伝子多型が関わっていることなどを明らかにしてきた. 感染症に対するこのような免疫遺伝学的アプローチは, 発症リスクの評価や重症化の予測, それに基づく予防・治療の個別化, さらには新しい治療法の開発に繋がるものと期待される.
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© 2010 産業医科大学
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