Journal of UOEH
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暑熱ストレスと人の血圧調節
山崎 文夫
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2010 年 32 巻 4 号 p. 329-340

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抄録
暑熱ストレスは, 労働を安全に行うことを妨げる主要な環境因子である. 暑熱ストレスは起立時に失神を起こしやすくさせ起立耐性を顕著に低下させる. その低下機序には心拍と末梢血管運動の圧反射機能の変化を含むいくつかの生理的因子が関与する. この総説では人の心拍と末梢血管運動の圧反射機能におよぼす暑熱ストレスの影響について考察する. 人を対象とした研究の結果から得られた主要な所見は以下の通りである. 1. 暑熱ストレスを受けると, 心拍数と末梢血管運動の動脈圧反射反応は遅延し, 急速な血圧低下刺激に対するそれらの反応は減少する. 2. 起立時の心拍数の迷走神経性血圧反射調節の感受性は, 暑熱ストレスによって低下する. 3. 皮膚血流量の増加に伴って中心血液量は減少し, 総末梢血管抵抗の統合的血圧反射調節の感受性は低下する. 4. 総末梢血管抵抗の圧反射感受性の低下は, 少なくとも部分的には皮膚血管収縮反応の低下によって説明できる. これらの血圧反射反応性の変化と中心血液量の減少は暑熱下での起立耐性の低下に関与すると考えられる.
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© 2010 産業医科大学
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