抄録
膵漿液性嚢胞腺腫(serous cystadenoma: SCA)は,悪性はまれであり経過観察されることが多い.今回我々は,嚢胞が増大傾向を示し,intraductal papillary-mucinous neoplasm(IPMN)との鑑別が困難であったため切除し,SCAであった1例を経験したため報告する.症例は58歳,女性.Meigs症候群を伴う右卵巣莢膜細胞腫に対して摘出術を施行された際,CTで膵頭部の多房性嚢胞性腫瘤を指摘され経過観察されていた.14ヶ月後のCTで嚢胞が2.4cmから3.5cmへ増大傾向を示し,嚢胞内に壁在結節を疑う所見を認め,IPMNの可能性が否定できなかったため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後の病理診断ではSCAの診断であった.発見の時点ではMeigs症候群による多量の腹水のため嚢胞が圧迫され,実際の嚢胞の大きさよりも小さく見えていた可能性が考えられた.