Journal of UOEH
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[報告]
一酸化窒素合成酵素と心不全― 遺伝子改変マウスからの教訓
柴田 清子下川 宏明柳原 延章尾辻 豊筒井 正人
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2013 年 35 巻 2 号 p. 147-158

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抄録
一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)には,神経型,誘導型,内皮型の3種類のNOSアイソフォームが存在する.ヒト心臓には,すべてのNOSsが発現している.従来,心不全におけるNOSsの役割が,NOS阻害薬を用いて研究されてきた.さらに,近年では,遺伝子改変動物が実験に使用されるようになり,ヒト心不全におけるNOSsの役割の理解に重要な示唆を与えている.我々は,NOSアイソフォームを欠損させたNOS遺伝子改変マウスを用いて,その心臓の構造と心機能を評価した.その結果,3種類のNOSアイソフォームを欠損させたtriple NOS欠損マウスにだけ,有意な求心性肥大と拡張障害があり,その病態は,ヒトの拡張期心不全に酷似していることを明らかにした.また,AT1受容体拮抗薬を負荷した結果,それらの病態が抑制されたことから,これらの機序には,AT1受容体を介していることが示唆された.triple NOS欠損マウスを用いた研究は,ヒト心不全におけるNOSsの役割の解明に,大きく寄与したものと言える.
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© 2013 産業医科大学
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