2013 年 35 巻 4 号 p. 279-289
高齢化の進行と傷病構造の変化,そして医療技術の進歩により急増する医療費をどのようにコントロールするかは先進国共通の課題となっている.英国は医療費増の抑制と医療の質向上を目的として,市場原理主義による医療制度改革を行ってきた.具体的には,General Practitioner(GP)によるゲートキーピングを内部市場の中で行う仕組み(GP Fundholding)の導入,公的病院建設における民間資本の活用(PFI),利用者が予算を持ちケアを購入する仕組み(Personal budget)などを導入してきた.しかしながら,その効果は十分に上がってはいないのが現実である.他方,社会保障制度を維持していくためには,雇用政策の充実が必要となる.具体的には雇用率の改善と労働生産性の向上を実現する政策である.こうした視点から,欧州では失業者に対する雇用訓練の義務化やワークシェアリングの導入など積極的な雇用政策が行われてきた.そして,近年では本号の他の著者が詳細に論述しているように医学的な面からも復職や雇用の継続を支援するための方策(Fit for Work: FFW)が展開されている.