Journal of UOEH
Online ISSN : 2187-2864
Print ISSN : 0387-821X
ISSN-L : 0387-821X
小細胞肺癌に合併した副腎機能不全症: 症例報告と文献的考察
野口 真吾鳥井 亮島袋 活子山崎 啓城戸 貴志吉井 千春迎 寛矢寺 和博
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 38 巻 2 号 p. 155-162

詳細
抄録

症例は78歳の男性.2015年2月,全身倦怠感,食欲低下,皮膚の色素沈着,低血圧,低血糖を認め,また,胸部レントゲンにて異常陰影,エコーにて副腎腫大を指摘されたため,当院を受診した.胸部computed tomography(CT)検査では右下葉に腫瘤影,両側副腎腫大を認め,気管支鏡検査の結果,小細胞肺癌,両側副腎転移と診断した.また,血清コルチゾールの低下,adrenocorticotropic hormone(ACTH)の上昇,および,迅速ACTH試験の結果から,小細胞肺癌に合併した副腎機能不全症と診断した.カルボプラチンとエトポシドによる化学療法に加えて,ハイドロコルチゾン20 mgによる加療を開始した.その後,患者の全身症状はやや軽快したが,1コース終了後,患者の希望にて化学療法は中止とした.その後,緩和的に加療を行ったが,徐々に全身状態の悪化を認め,2015年8月に永眠された.肺癌患者における副腎転移は稀ではないが,小細胞肺癌に合併した副腎機能不全症は稀であり,副腎の90%以上の機能が破たんした場合に発症する.肺癌診療において,全身倦怠感,食欲低下,低血圧,低Na血症といった所見は,しばしば癌の進行に伴う所見として経過観察される場合がみられるが,副腎機能不全症に対する適切な治療(副腎皮質ホルモンの補充)は症状や生活の質の意義のある改善をもたらすため,両側副腎転移を有する小細胞肺癌患者では副腎機能不全症の可能性を考慮しなければならない.

著者関連情報
© 2016 産業医科大学
前の記事 次の記事
feedback
Top