抄録
本研究の目的は,メンタルヘルス不調により休業した労働者の事例を分析し,メンタルヘルス不調の若年労働者への対応方法を検討することである.我々は,11名の産業医から収集した36例のメンタルヘルス不調による休業者の事例提供を受け,若年労働者の対応方法について検討を行った.メンタルヘルス不調の労働者対応の詳細および対応上の要点や課題に関する記述を整理分類し,30歳未満と30歳以上の労働者の2群間で比較検討を行った.産業看護職が職場の主要な対応者である割合は,30歳以上群(休業開始前:16.7%,休業中:11.1%)と比べ,30歳未満群(休業開始前:38.9%,休業中:38.9%)で多かった.メンタルヘルス不調により休業した労働者の対応上の要点は,両群ともに休業・職場復帰支援体制が必要である意見がもっとも多かった.また30歳未満群は家族との連携が重要である意見が多かった.若年労働者は,キャリアが短く十分な職務能力が不足している点や,個人要因によるメンタルヘルス不調が多い傾向にある点など,若年労働者に適応した職場や業務に配置転換が難しい可能性がある.メンタルヘルス不調の若年労働者への対応として,産業看護職による支援体制や職場と家族間の連携の強化が重要であることが示唆された.