Journal of UOEH
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16S rRNA遺伝子を標的とした細菌叢解析手法
福田 和正 小川 みどり谷口 初美齋藤 光正
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2016 年 38 巻 3 号 p. 223-232

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抄録

1970年代に16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく細菌の系統的な生物種分類法が提唱されて以来,微生物を検出するため,従来の培養法に加え,培養法に依存しない分子生物学的手法が考案されてきた.その開発と普及は微生物研究に革命的な進歩をもたらし,従来の培養法では検出できない細菌の研究に大きく寄与している.蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法(FISH),定量PCR(Q-PCR),末端標識制限酵素断片多型分析(T-RFLP),変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE),クローンライブラリー解析や次世代型DNAシークエンス解析などの16S rRNA遺伝子を標的とした分子生物学的手法は,さまざまな微生物研究に応用されている.特に,次世代型DNAシークエンサーを用いた多くの研究は,大規模な細菌叢解析を可能にしており,最近の多くの研究は人体のさまざまな部位や,地球上のさまざまな場所に予想以上の数と種類の細菌が生息していることを明らかにしている.これらの分子生物学的手法は,それぞれの方法で原理や特徴は異なり,標的特異性,網羅性,迅速性や経済性などにおいて,それぞれ独自の利点を有している.それゆえ,研究の目的や対象に応じて,適した手法を選択することは重要である.本稿では,細菌叢解析に用いられる16S rRNA遺伝子を標的とした手法について概説し,それぞれの手法の利点や限界について考察する.

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© 2016 産業医科大学
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