Journal of UOEH
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上腕骨骨幹部骨折後の偽関節手術に対し術後合併症を回避し得た1例
栗之丸 直朗 善家 雄吉古川 佳世子山中 芳亮酒井 昭典
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2016 年 38 巻 4 号 p. 297-304

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抄録

脆弱性の強い上腕骨骨幹部骨折後の偽関節に対して手術を施行した1例を報告する.上腕骨骨幹部骨折はほとんどの場合,初期治療で問題のないことが多いが,一部の症例では治療が困難であることがある.症例は61歳,男性.左上腕骨骨幹部骨折を受傷した.他院にて骨接合術を施行され,術後,疼痛なく日常生活も仕事もできていた.特に誘因なく左上腕部に疼痛および不安定感を自覚した.近医を受診して左上腕骨偽関節を指摘され,保存療法を行うも症状の改善はなく,当院へ紹介受診となった.初診時は,左上腕中央部に肘関節屈曲で前方に大きく突出する可動性の骨性隆起を触れた.しかし,明らかな感染,神経麻痺や血行障害は認めなかった.左上腕骨骨幹部骨折遅発性偽関節と診断し,偽関節手術を施行した.残存スクリューを抜釘後,近位より髄内釘を挿入した.骨接合術終了直後に髄内釘遠位端での骨折が生じた.二期的手術として,上腕骨遠位端骨折に対して骨折部のデブリードマンを行った後,骨移植と両側プレートによる骨接合術を施行した.術後8ヶ月が経過し骨癒合および可動域は良好であり,合併は認めていない.偽関節発症後に長期間が経過している症例は,骨折部の骨硬化が強いものの骨脆弱性を有しており,骨接合に難渋することが予想される.骨脆弱性の強い偽関節手術施行の際は,術中骨折の可能性も考慮し,十分な術前計画を練った上でインプラントを準備しなければならない.

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© 2016 産業医科大学
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