2017 年 39 巻 1 号 p. 1-9
シタグリプチン(sitagliptin; S)50 mgで効果不十分な2型糖尿病患者をS 100 mgに増量する群とミチグリニドカルシウム水和物・ボグリボース(mitiglinide calcium hydrate/voglibose)配合錠(M/V)に変更する群とに分け,両薬剤の特徴や差異を明らかにする.S 50 mgにて加療中のHbA1c 6.5%以上の2型糖尿病患者5名にM/Vに切替群,S 100 mg増量群に無作為に割り付け,5日間投与後にクロスオーバーを行う.主要評価項目は,平均血糖変動幅(MAGE),副次評価項目は24時間平均血糖,血糖200 mg/dl 以上,70 mg/dl 未満出現頻度,午前0時~午前7時平均血糖,午前7時~午前0時平均血糖,最大血糖,最小血糖,各食前血糖,食後血糖上昇幅とした.MAGEは,M/VでP = 0.016と有意に低かった.24時間平均血糖,午前0時~午前7時平均血糖,午前7時~午前0時平均血糖に差は無かったが,午前0時~午前7時平均血糖はS 100 mgで低い傾向が見られた.血糖70 mg/dl 未満はなく,血糖200 mg/dl 以上の時間はM/VでP = 0.041と有意に短かった.最大血糖はM/VでP = 0.043と有意に低く,最小血糖はS 100 mgでP = 0.043と有意に低かった.朝食後,昼食後血糖上昇幅に差はないが,夕食後と平均の食後血糖上昇幅はM/Vで各々P = 0.090,0.045と有意に低かった.2型糖尿病患者では,M/Vへの変更で平均血糖変動幅や食後高血糖が改善し,S 100 mgへの増量では深夜から早朝の血糖が低下する特徴が明らかになった.この研究は,大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)に登録された(No.UMIN R000008274).