Journal of UOEH
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[総説]
気管内注入試験は,工業用ナノ材料の肺有害性スクリーニングとして有用である
森本 泰夫 和泉 弘人吉浦 由貴子藤澤 有里藤田 克英
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2017 年 39 巻 2 号 p. 123-132

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抄録

吸入性化学物質の肺有害性を評価するゴールドスタンダード試験は,吸入ばく露試験である.一方,気管内注入試験は,用量反応関係,メカニズムの解明など広く実施されているが,肺有害性に関するエビデンスが限られている.我々は,気管内注入試験と吸入ばく露試験を比較した報告を中心に工業用ナノ材料の肺有害性評価として気管内注入試験の有用性を解説する.吸入ばく露試験と比較して,気管内注入試験は,対象となるナノ材料を一挙に注入するため,ナノ材料の有害性のレベルにかかわらず,注入直後(注入後3日から1週間)に肺炎症を引き起こす.しかし肺有害性の強いナノ材料は,急性期のみならず慢性期(注入後3ヶ月から6ヶ月)まで持続性炎症を示すが,肺有害性の弱いナノ材料は,急性期の一過性炎症のみである.従って,肺有害性を評価するための注入後の観察期間は,慢性期まで行うことが重要と思われる.肺有害性の評価項目では,気管支肺胞洗浄液中の好中球数,比率,好中球やマクロファージのケモカイン,酸化ストレスマーカーがあげられ,肺有害性の強い物質では,これらの評価項目が慢性期に至るまで持続的反応を示す.一方,肺有害性が弱い物質では,急性期のみの反応となる.よって,気管内注入試験で,慢性期まで観察し,炎症関連因子の持続反応性を評価することで,気管内注入試験が,吸入ばく露試験の肺有害性のスクリーニング試験として有用であることが示唆される.

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© 2017 産業医科大学
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