抄録
後天性血液凝固第Ⅷ因子障害(後天性血友病A)は,凝固第Ⅷ因子(FⅧ)に対する自己抗体(インヒビター)が後天的に出現し,重篤な出血症状を来し得る疾患である.年間発症率は0.25~1人/100万人と言われていたが,疾患概念が浸透したことで成人領域では診断例が増加している.一方,小児では0.045人/100万人と極めてまれな疾患であるが,成人と同様に重篤な出血を起こすため早期診断が重要である.今回,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)クロスミキシングテストの結果から後天性血友病Aを疑い,早期診断が可能であった小児例を経験した.症例は12歳女児.出血性疾患の家族歴,出血症状の既往はない.誘因のない両側大腿痛を主訴に近医整形外科を受診し,MRIで筋肉内出血を認めた.その後,鼻出血も出現したため出血性疾患を疑われ産業医科大学小児科を受診した.血液検査ではAPTTのみ延長していた.APTT延長の原因精査のために施行したAPTTクロスミキシングテストでは,即時反応より遅延反応でより明確な凝固第Ⅷ因子に対する抗凝固因子(インヒビター)パターンを認めたため,初診時よりインヒビターの存在を強く疑い注意深く経過観察を行った.確定診断後から治療を開始した.筋肉内出血は止血治療を要さず安静のみで軽快し,後天性血友病Aはプレドニゾロン内服のみで寛解した.小児期(12歳)発症の後天性血友病Aは極めてまれであるが,重篤な出血も起こすため早期に診断することが重要であり,APTTクロスミキシングテストが診断に有用であった.