2019 年 41 巻 2 号 p. 239-242
症例は生来健康な55歳の男性.5年前から心不全症状があり,僧帽弁閉鎖不全症と心房中隔欠損症の診断にて近医でフォローされていたが,僧帽弁逆流による労作時の呼吸困難の増悪があり当院に紹介された.心エコー図検査で房室弁逆流および心房中隔一次孔欠損を認め,心室中隔欠損はなく不完全型房室中隔欠損症(partial atrioventricular septal defect: pAVSD)と診断された.手術は胸骨正中切開で行った.手術所見では左側房室弁前尖に裂隙,石灰化・肥厚があり,心房中隔一次孔の欠損を認めたが,心室中隔欠損は認めなかった.左側房室弁の裂隙を縫合閉鎖したが,房室弁逆流が残存した.前尖の腱索付着側(rough zone)を腱索部分含め追加縫合し逆流を制御した.一次孔欠損は自己心膜を用いてパッチ閉鎖した.術後は合併症なく経過し,術後24日目に独歩で自宅退院した.現在,術後1年6ヶ月が経過し,外来通院中である.