抄録
中国や朝鮮や日本などのアジアの国々における伝統的な食材である食用海藻は,その利用法として,食味や風味を高めるために,食材を乾燥した後,さらに加熱焙煎をする場合がある.本論文では,この食用海藻の加熱焙煎処理の栄養学的意義を明らかにするために,生活習慣病などの原因や予防に関与する活性酸素の生成に対するラジカル消去活性について,日本の代表的な食用海藻であるマコンブの加熱焙煎処理との関連を分析した.その結果,マコンブを一定以上の高温(130-150ºC)で加熱焙煎処理をすると,その抽出液において,弱いながら統計学的に有意なDPPHラジカル消去活性やスーパーオキサイドラジカル消去活性の増加が認められた.さらにより高温(180-200ºC)で加熱焙煎処理をすると,著しいラジカル消去活性の増加が認められた.これらのラジカル消去活性の増加の原因として,加熱焙煎処理によりマコンブ抽出液中のポリフェノールやタンニンなどのラジカル消去に関与する物質の増加が明らかとなった.またマコンブ抽出液中の糖濃度が,ラジカル消去活性と有意の正の相関性を示した.しかしマコンブ抽出液中のたん白質濃度とラジカル消去活性との相関関係は認められなかった.また加熱焙煎処理(180-200ºC)によるマコンブ抽出液が,オプソニン化ザイモザンによるヒト好中球の活性酸素の生産・放出を強く抑制した.以上の実験結果により,マコンブを特定の条件で加熱焙煎処理をすると,その抽出液中に,強いラジカル消去活性が発現する可能性が示唆された.