2020 年 42 巻 1 号 p. 1-12
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とBNP前駆体N末端フラグメント(NT-proBNP)は,心不全患者の診断と治療指標として不可欠なバイオマーカーである.しかしながら,古くからBNPに慣れ親しんだ臨床医にとっては,NT-proBNP値からBNP値を推測することはしばしば困難である.我々は,NT-proBNP値からBNP値を推算する式を作成し,推算されたBNP値が実際のBNP値と同等の予後予測能を有するかを検討した.我々は,心不全あるいは心不全疑い患者374例(導出群)のデータから,多変量解析を用いてBNP値推算式を作成した.検証群375例において,推定BNPレベルが実際のBNPおよびNT-proBNPレベルと比較して同等の予後予測能を有するかを検証した.導出群において,logBNPとlogNT-proBNPとの間には強い相関があった(r = 0.90).検証群では49例で主要有害心臓事象が発生した.Cox比例解析により,実際のBNPレベルと推定BNPレベルが将来の心血管転帰に対する同等かつ有意な予測因子であることが明らかとなった.したがって,この推算式は,特にNT-proBNP検査に慣れていない医師にとって有用である可能性が示唆された.