Journal of UOEH
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筋骨格系慢性疼痛を持つ労働者における恐怖回避思考と労働生産性の関連性について;縦断調査
菅野 良介 池上 和範安藤 肇野澤 弘樹道井 聡史近藤 三保井本 ひとみ志摩 梓河津 雄一郎藤野 善久大神 明
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2020 年 42 巻 1 号 p. 13-26

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抄録

本研究の目的は,筋骨格系慢性疼痛の危険因子を特定し,慢性筋骨格系疼痛を持つ労働者の恐怖回避思考が生産性に与える影響を調査することである.2016年4月から2017年3月にかけて3つの異なる業種の従業員に対して自記式質問紙を用いて縦断調査を実施し,質問紙には基本属性,業務関連因子,筋骨格系慢性疼痛,Work Functioning Impairment Scale(WFun),日本語版Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK-J)に関して回答を求めた.ロジスティック回帰分析を実行して筋骨格系慢性疼痛に影響を与える要因を分析したところ,年齢(オッズ比[OR] = 1.02,95%信頼区間[CI]: 1.00-1.03),平均労働時間(OR = 1.18,95%CI: 1.04-1.33),および労働時間の変化(OR = 1.18,95%CI:1.02-1.37)において慢性筋骨格系疼痛の発生と関連が見られた.また,多元配置分散分析を行って,恐怖回避思考と筋骨格系慢性疼痛,および恐怖回避思考と労働機能障害の関係を分析したところ,恐怖回避思考が強いほどWFunの得点が大きくなり,恐怖回避思考が強まるとWFunの得点も増加することが示された.本研究より,長時間労働または労働時間の増加が慢性筋骨格系疼痛の危険因子であり,慢性筋骨格系疼痛を持つ労働者の恐怖回避思考の増強と労働機能障害の悪化が関連していることが示された.また,恐怖回避思考を改善するアプローチは筋骨格系慢性疼痛を抱える労働者にとって有効である可能性がある.

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© 2020 産業医科大学
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