Journal of UOEH
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化膿性関節炎の診断における関節液中αディフェンシン1の有用性
田島 貴文 森 俊陽平野 文崇佐羽内 研川崎 展山中 芳亮塚本 学酒井 昭典
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2020 年 42 巻 2 号 p. 167-173

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抄録

日常診療において,細菌感染による化膿性関節炎と偽痛風発作などの非化膿性関節炎の鑑別は手術加療を要するか否かを判定する上で非常に重要であるにもかかわらず,早期段階では困難であることが多い.本研究では,発熱を有する関節炎患者において,血清および関節液中のα-defensinおよびβ-defensinが感染の診断に有用であるか否かを検討することを目的とした.対象は,37°C以上の発熱を有し,膝関節もしくは股関節に疼痛を伴った関節炎を発症した患者12例である.化膿性関節炎の診断の確定は,MSIS(Musculoskeletal Infection Society)によるPJI(Periprosthetic Joint Infection)定義を参照とし,感染群と非感染群に分けた.ELISA法で血清および関節液中のα-defensin-1およびβ-defensin-3を測定した.血清中α-defensin-1は両群で有意差はなかった一方で,関節液中α-defensin-1(ng / ml)は感染群で33.6 ± 26.2,非感染群で0.9 ± 0.4と有意に感染群で高値を示した.β-defensin-3は血清,関節液ともに有意差は認めなかった.感染群において,人工関節のない症例においても関節液中α-defensin-1は高値であった.発熱を有する関節炎患者において,化膿性関節炎では関節液中α-defensin-1は非化膿性関節炎と比較して有意に高値であった.関節液中α-defensin-1は化膿性関節炎の診断において有用なマーカーである.

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© 2020 産業医科大学
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