Journal of UOEH
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殺ダニ剤シフルメトフェンによる施設栽培者の皮膚障害 - 面談調査から
永美 大志 末永 隆次郎
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2022 年 44 巻 1 号 p. 101-105

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抄録

農薬は生物活性をもち開放的に使用されることから,その悪影響を監視し防止する必要がある.農業者の自記式調査により,殺ダニ剤シフルメトフェンによる皮膚障害が複数認められたので面談調査により実態の把握を試みた.調査した農業者は施設イチゴ栽培部会員およびその家族であり,部会の健康調査と合わせて,2016,2017年春に行った.対象者は108名(男:女=62:46,55.3 ± 9.6才)であった.健診に参加した方々に,シフルメトフェンによる皮膚障害について,使用,障害,医療機関への受診状況などを質問した.シフルメトフェンによる皮膚障害により,医療機関を受診した方が7名(7%,男:女=5:2),皮膚障害を自覚したものの医療機関を受診しなかった方が13名(12%,男:女=10:3),合計20名(19%)であった.多発した部位は,顔面の目の周辺であり,続いて手から前腕であった.症状は,痒み,発赤のみの軽いものから,目の周辺の腫脹,痛みなどを伴う重いものもあった.医療機関への通院が3~4週継続した方が3名(3%)おり,発症後,同剤の使用を自主的に中止されていた.下記の動物実験の結果から,重い症状を経験された方々には,使用の中止を継続するように申し上げた.農薬抄録などには,同剤がモルモットで皮膚感作性があったことが記されている.安全データシートにも皮膚感作性があることを明記すべきである.

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