2022 年 44 巻 1 号 p. 91-100
産業医科大学産業保健学部看護学科3年次から4年次にかけての必修科目として,慢性疾患をもった成人期にある患者への看護実践の基礎的能力を習得するための専門科目「成人看護学実習(慢性期)」が設置されている.従来,学生は全3週間,病棟および外来診療部門・入院支援室で臨地実習を行い,慢性疾患をもつ患者と直接関わり,慢性期看護の専門性について学びを深めてきた.しかし,この度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に伴い,本学看護学科では臨地実習をどのように実施するのか早急な検討と対応が求められた.その結果,2020年5月以降に予定されていた対面での臨地実習を中止し,オンライン実習に切り替えて実施することになった.成人看護学実習(慢性期)は,オンライン会議システムであるZoom(Zoom,CA)を用いて遠隔実習を実施した.オンライン実習では,同時双方向型の実習を実現することを目指した.実習準備として模擬事例および模擬電子カルテを設定し,教員が「模擬患者」,「臨地実習指導者」,「教員」の役割を担い,学生がリアルタイムで看護展開ができるように工夫した.結果として,学生はオンライン環境にあっても臨地での実習と同様に日々模擬患者と関わることにより,リアリティを感じながら実習に臨んでいた一方で,五感を通した学びや患者にとって適切なタイミングを配慮して援助することなどに限界を感じており,オンライン実習特有の課題も見出された.