2022 年 44 巻 3 号 p. 313-319
慢性疾患をもった成人期にある患者への看護実践の基礎的能力を習得するための専門科目「成人看護学実習(慢性期)」では,新型コロナウイルス感染症流行前は,全3週間,内科系病棟および外来診療部門・入院支援室で臨地実習を行ってきた.しかし,新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い,2020年5月はオンライン実習に切り替えて実施し,2020年10月からは本学大学病院での臨地実習が再開した.臨地実習は,本学の新型コロナウイルス対応マニュアルに基づいた実習基準のもと,病院滞在時間に制限が設けられ,病棟実習は患者と会話や接触をしないシャドーイングを中心とした実習を構築した.教育上の工夫として, 1名の患者を原則2名の学生で受け持ち,午前と午後に分散して実習を行った.また,会話を通して知り得る患者情報の取得や看護援助の実施は,学生自身が実践する姿勢をもって実習に臨むことができるように,シャドーイングの視点を明確に,具体的な内容を明文化させ,看護師を媒介者として患者と関わる経験となるよう支援した.その結果,学生は自分が考えた看護計画に基づく援助内容を媒介者である看護師の実践をもとに評価し,さらに,看護師が臨床判断のもと実践した援助と比較し,臨床判断の根拠を踏まえた実践的な学びにつながった.一方で,援助的人間関係の構築過程や看護技術の実践は経験できず,課題が残った.