1983 年 5 巻 1 号 p. 27-33
精製したラットの肝細胞のRNAポリメラーゼⅡについて電子顕微鏡を用いてその存在様式と機能について分析したので報告する. 精製したRNAポリメラーゼⅡは, 電子顕微鏡で見るとそれぞれの平均直径が, 324Åと152Åの二種類の粒子像が, 認められた. 他の分析結果と合わせて考えると前者が, 酵素ダイマー, 後者が, 酵素モノマーと考えられた. また, プロモーター領域を含んだファージDNAを用いてそれらの酵素のDNAに対する結合の状態を調べると圧倒的に, ダイマー型の酵素が, 撰択的に結合していた. さらにその結合位置は, プロモーター領域に集中していた. これらの結果より転写のプレイニシエーションの過程でRNAポリメラーゼⅡのダイマーがDNAに対する認識に何らかの役割をしている可能性が示唆された.