抄録
マウス腹腔内へ, エールリッヒ腹水癌細胞を移植した後, 経時的に肝ミクロゾームのシトクロームP-450の変動を調べた. 癌細胞の移植後, 6日目で肝ミクロゾームのシトクロームP-450の減少が観察され, 以後徐々に減少し, 第2週の後半では正常肝の40-50%にまで減少する. シトクロームP-450が関与する7-エトキシクマリンの脱エチル化活性はミクロゾームのP-450量にほぼ比例して低下するが, ベンツフェタミンのN-脱メチル化反応のP-450あたりの比活性はむしろ正常肝と比べて約2倍に上昇していた. 担癌肝でヘム酵素は一般に減少するが, P-450に関しては, 総含量は減少するものの, 総ての構成型酵素が無差別に減少するのではなく, 選択的に制御されていることを示唆している.