急性心筋梗塞における冠動脈血栓溶解療法(Percutaneous Transluminal Coronary Recanalization: PTCR)の効果を検討した. PTCR成功例7例とPTCRを行わなかった急性心筋梗塞32例の慢性期(発症後約1か月)における左室拡張末期圧, 心係数, 左室造影および心プールスキャンによる左室駆出率, 心筋シンチグラムによるdefect scoreおよび左室造影によるregional ejection fractionには, 責任冠動脈病変が右冠動脈・左冠動脈前下降枝のいずれの場合にでも, 有意差をみとめなかった. 病変部位・程度および臨床像の類似した2症例の比較ではPTCRの有用性がうかがえた. PTCRによる冠動脈再開率は70%と高率で,重篤な副作用は認めず, 急性心筋梗塞患者の死亡率の減少および心機能の改善が期待できるため, PTCRは急性心筋梗塞発症期において積極的に施行すべき治療法と考えられる. しかしその長期的効果の判定には, 多数症例によるコントロール治験が必要である.