住宅建築研究所報
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東北地方都市住居の地方性に関する研究(2)
佐々木 嘉彦渡辺 正朋梅津 光男月館 敏栄戸部 栄一志田 正男
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1987 年 13 巻 p. 89-103

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抄録

 この研究は,東北地方の特色ある文化圏における中心都市の戸建て持家を対象として,生活文化とその変容という視点から建築形態および空間構成の地域的特徴とその意味を分析し,あわせて住居における地方性の概念化を試みることを目的としている。特色ある文化圏とされる文化圏中心都市として弘前市,遠野市,鶴岡市,米沢市,会津若松市の5都市および仙台市を選定し,これらの都市の住居を対象として,住居の形態(主に住宅の間取と各室の構成,座敷の形態),屋敷構え(主に庭,門,座敷位置による配置型),および生産組織と構法(主に地域の気候特性との関係),暮らしの形態および住居の意味にかかわる住意識,について調べた。伝統的な和風の住居には,全体としてみても,また外観,間取,各室などにわけてみても,それぞれの構えかたとして説明ができるような秩序,形式が認められた。しかし,それは日本の内部の地方性ではなく,日本文化の等質性として理解されるものである。このような住居の構えかたは,それらの存在基盤が失われたために,現代住居においてはその多くが変容,喪失している。そして,たとえば,公私室型,和洋統合型の間取構成など,新しい形式がつくられつつある部分も認められる。また,こうした動向・新しい形態には地域による違いが認められる。このような地域的な違いを地方性といいうるかどうかについて,文化としての地方性の概念に照らして検討した。しかし,住居の地方性を住文化の地方性とみる限りにおいては,各都市の地方性はないと結論づけられる。ただし,積雪地域の住宅構法は,積雪への対応としてみれば,理論的かつ系統的なものであるため,地方性といいうる内容を持っており,これが定着していくならば,この点に関しての地方性となりうることが知られた。

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© 1987 一般財団法人 住総研
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