抄録
本研究の目的は,東北地方の新しい都市住宅を対象とし,住居形態及び空間構成の変容動向とその要因を明らかにすることである。このために,住文化の概念から演繹される「構え方」の概念を設定し,その継承と変容という観点からこの内容を検討した。本研究は,昭和59,60年度の助成研究「東北地方都市住居の地方性に関する研究」の継続研究にあたるものであり,本年度は青森市,秋田市,盛岡市の新築住宅(中規模以上,一戸建て,注文住宅,市街化区域内立地)について調べた。そして,つぎのような結果を得た。1.伝統的な形態の継承は,①続き間座敷・和室の基本構成,②座敷構えの構成,③伝統的な動線構成,などにみられ,その内容は,①室の洋風化,②2階建て化,③室の独立化,④居住室の南面化,⑤炊事場のDK化,⑥接客構え・座敷構えの形式化,⑦座敷構えの表現化,などにみられる。2.新しい住宅の間取りには,①和洋室構成,②個室と続き間座敷とDK等による室構成,③廊下・ホールによる室の分離・結合,④2階健て,⑤居住室とサービス空間の南北配置,⑥伝統的な動線構成(玄関‐次の間‐座敷),などの形式が成立している。3.住み方としては,①住居の社会生活機能の減少,②公私室分離を軸とする住み方ヘ,③親子関係を軸とする住み分けヘ,④家族生活(団らん)重視の住み方ヘ,⑤和風・洋風共存の住み方ヘ,⑥自己の資質の表現の場ヘ,などの変容がみられる。4.このことから新しい都市住宅の構え方は,「豊かさ指向という関心に支えられた和洋統合の構え方」とまとめられる。5.しかし,具体的な間取りは多様であり,形態及び住み方についての様々な意識がその多様性と結びつき,構え方の変容に大きな役割を果しているように思われる。