住宅建築研究所報
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集合住宅の平面型の評価に関する研究
本間 博文志田 正男
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1988 年 14 巻 p. 139-156

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抄録
 本研究は公営住宅の平面型の評価基準を作成することを目的として行なったものである。近年公営住宅は以前のような画一的な形態から抜け出し,様々なアプローチが行なわれ,水準の向上が著しい。しかし,このような変化が居住者の要求に添った居住環境を実現しているかどうか,とりわけ平面型についての充分な検討が必要である。 戦後の住宅における平面計画の流れの中で一貫して公私を分離する傾向が強く,最近の新しい公営住宅の平面型においてもこの傾向は変わらない。しかし,日本人のプライバシーに関する意識や入居世帯の年齢の低下を考慮したときにこのような平面型が,居住者の日常の生活の様々な要求に充分応えることができる平面であるかどうか疑問である。ところが,従来の研究成果をみても,公私室型住宅の平面型の住まい方をいくら詳しく調べてみても,その平面型に変わる新しい平面型を提案できるような成果は期待できない。本研究はこのような観点から,公私室型の平面型と対象的な開放型の平面型を提案し,この2つの平面型の住まい方を比較することにより,新しい平面型の評価基準を明らかにしようとするものである。比較検討した内容は,各室の使われ方の居住者の評価,室内環境の評価,設備に対する評価,各室に置かれている家具の種類と配置,各室の建具の開閉状態などである。公私室型住宅の平面型として茨城県の県営住宅を調べたが,調査の結果,各室の使われ方が固定しており,北側に配置された独立性の高い個室の室内環境に問題があり,南面する部屋で生活の大部分が行なわれ,各室が有効に使われていないことが明らかになった。それに対し,開放型の平面型は居住者の多様な生活に合わせた使われ方が行なわれている。このような,自由な使われ方ができることが居住者にとって住み易い平面型であるとは限らないが2つの平面型の間に明らかな違いが見いだされたことは,今後の公営住宅の平面計画における重要な評価項目として検討すべき課題であろう。
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© 1988 一般財団法人 住総研
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