住宅建築研究所報
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上越市中ノ俣および愛媛県二神島の調査を中心とする山村および漁村における民家・集落の比較研究(1)
西 和夫津田 良樹
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1988 年 14 巻 p. 171-180

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抄録
 新潟県上越市中ノ俣と愛媛県中島町二神島は,ともに過疎化の波に瀕した集落である。中ノ俣は山村,二神島は漁村で,戸数は80戸と150戸であるが,近年若者が次々に外へ出,人々は今後どうすぺきかを懸命に模索している。両集落とも,集落の空間構成,民家の平面や構造集落の歴史や人々の生活慣習など貴重な歴史的資料を伝えてきており,これらを正確に調査し分析することは,集落の史的価値を正しく認識し,過疎化の進むことを正める上に,役立つところも決して少なくないと考えられる。中ノ俣には,「くずや」と地元で呼ぶ茅葺屋根の家が60棟ほどあり,そのうち最も古いものは天明5年(1785)にまで遡る。平面は3間×3間または2.5間×3間のチャノマを中心とするほぼ共通した様相を呈している。二神島には江戸時代に遡る家7戸があり,主屋・ヘヤなどの建物がヒノラと呼ぶ中庭を囲んで建ち,いわば中庭形式とでも呼ぶべき配置をとるのが二神島の民家の特色である。両集落とも神社が1つだけあり,祭礼のとき御輿が出る。御輿が集落の中をねり歩く経路は中ノ俣は集落内をぐるっと一巡し,二神島は海沿いの道を往復するという相違を見せるが,ともに集落の空間をよく反映しており,中ノ俣の家々が散り散りに位置し,道がその間をぐるっと回ること,二神島の家々が海沿いの道の山側に密集することと深く結びつく。中ノ俣には家と家を交換する「えがえ」(家替)という慣習があり,二神島には家の中にさまざまな神を祀る慣習がある。ともに特色ある慣習で,集落の歴史と合わせて検討を進めている。調査はまだ中間段階で,今後も両集落を比較しつつ,調査研究を進める予定である。
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© 1988 一般財団法人 住総研
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