住宅建築研究所報
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伝統的都市集住環境の空間秩序生成に関する研究
宮本 雅明中川 等
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ジャーナル オープンアクセス

1988 年 14 巻 p. 219-230

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抄録

 伝統的都市の集住環境には,各々の住環境に固有の空間構成上の秩序が存在する。この種の空間秩序の存在形態を解明する試みはいくつかなされているが,その生成にかかわる具体的なメカニズムは,必ずしも明らかになっていない。本研究は,会津若松を研究対象地に選び,この空間秩序の存在形態を現地調査にもとづいて明らかにすること,またこの空間秩序が生成をみるに至ったメカニズムを探り,その成立契機を明らかにすることを目的としたものである。第1章では,研究対象を規定する条件を予め明確にするため,研究対象地である会津若松の都市構造を,主に既往研究成果に依拠して若干の考察を加えつつ概観し,合わせて現地調査の目的と方法,結果の概要を述べた。第2章では,都市住居の遺構調査の成果にもとづき,都市住居単体の空間構成の類型化を図りつつその在在形態を明らかにし,次いで個と個のかかわり方の分析を通して集住環境全体に備わる空間秩序の抽出を試み,最後に会津藩領における伝統的集住環境の存在形態を概観した。第3章では,明治期から江戸後期に遡って個々の都市住居の形成過程を,遺構調査の成果と絵画史料・文献史料を照らし合わせつつ明らかにし,次いで江戸後期の集住環境全体の空間構成とその構成原埋である空間秩序の歴史的な存在形態を明確にした。第4章では,前章で存在形態を明確にした都市集住環境に備わる空間秩序が,いかにして生成をみたかを文献史料に依拠しつつ考察し,最初に奥行方向の空間秩序の生成過程を,市立てとの関係から伝統的都市住居の成立契機を探りつつ明らかにし,次いで間口方向の空間秩序の生成過程を,「追垣」との関係から伝統的集住環境の成立契機を探りつつ明らかにし,最後に集住環境の成立契機について町割との関連から考察を加えた。

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© 1988 一般財団法人 住総研
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