抄録
本研究は第2年度の継続研究である。第1年度において文化村の開発から現在に至る基本的な構造について把握したが,さらに文化村の全体像に迫るため,本年度は7テーマにわたって研究を進めた。まず第5章では改めて本研究の性格づけを行なっている。地域とは外部要因と内部要因の複雑な絡まりによって成り立っているが,こうした地域研究の1つである本研究では,研究の特質を,①地域性②多角性③密着性④持続性の面から述べている。第6章は3節から成り立っている。第1節では土地の所有関係から文化村の土地買収の経過を詳細に分析している。土地買収が大正3年から行なわれたこと,土地の所有関係の変遷は堤康次郎,箱根土地の関係から8 つのパターンに分けられることが明らかになった。第2節は分譲から昭和61年に至る土地所有関係の変化を追っている。土地売買については戦後に際立って多く行なわれた。第1節では土地と建物を合せてその権利関係を分析している。第7章は「目白文化付」周辺地域の開発について,大正10年に建設された東京府住宅協会の住宅151戸と,翌年行なわれた近衛邸の開放について,箱根土地との関連で展開している。第8章は昭和15年時点での居住者階層について新資料によりまとめ,また戦争中の暮らしについて居住者組織の関連で述べている。第9章では住宅平面の復元方法について述べ,さらに当時の文化付が外観においてはかなり洋風化が進んでいたことを明らかにしている。第10章では文化付にみられる洋風住宅の様式・デザインからイギリス,アメリカの郊外住宅の影響について分析した。第11章では文化付の環境保全の住民運動をとり上げ,今日の良好な環境保全が住民の主体的努力によっていることを評価している。