住宅総合研究財団研究年報
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朝鮮住宅営団の住宅に関する研究(2)
ソウルに現存する旧営団住宅を中心として
冨井 正憲川端 貢鈴木 信弘渋谷 猛
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1990 年 16 巻 p. 79-89

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抄録
 昨年度の上道洞旧営団住宅地に引続き,今年は文来洞(旧道林町),山谷洞(白馬町)の2住宅地を調査対象として,文献資料を中心に事業の史的経緯,住宅地計画,住居計画について検討している。次に現況住宅地の街区,街路,現存,用途調査を行ない,これを建設時と比較分析して,住宅地の変遷状況について考察を行なった。また,現存住宅の実測及び住み方調査を行ない,増改築の分析を通して住様式の変容と在続についての考察を行なった。おわりに3地域を総括的に比較検討している。そこで得た主な知見を以下に記す。(1)事業の史的経緯:営団の3大事業として最初に計画された上道町,道林町住宅地の建設は1941年10月に地鎮祭を行ない,翌1942年9月に竣工式を迎えた。受託事業の白馬町住宅地もほぼ同時期に計画は進んだが,竣工は遅れて1944年11月である。(2)住宅地計画:営団の住宅地計画は敷地状況に応じてロータリー型,グリット型,両者の折衷型の3タイプを使い分けている。上道町,道林町,番大方町の営団3大事業はそれぞれのタイプの試験的使命を待っていた。(3)住居計画:朝鮮住宅営団の住居計画は「型計画」理論の典型的な実践事例である。5タイプ29種類の標準現格住宅の中から多種多様の型を選ぴ合理的に配置した道林町住宅地の「型計画」は最も質が高い。白馬町受託事業の計画には伝統韓屋の型が用いられた。(4)住宅地の変遷:上道洞,山谷洞は計画から自立し成熟した街に変容している。しかし文来洞は質の高い計画で出発したにもかかわらず,今は住環境の悪化が目立つ。(5)住様式の変容と存続:標準規格住宅は細部では防寒的な工夫をしながらも,基本は内地と同じ「続き間をもつ中廊下型」住宅である。45年間で旧営団住宅がもつ日本的な住様式は悉く崩壊,消滅して,韓国の伝統的かつ独自の住様式が再生,構築されている。調査事例から日本が韓国に与えた住様式の影響を見いだすことは難しい。
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© 1990 一般財団法人 住総研
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