住宅総合研究財団研究年報
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中廊下型農家住宅の成立とその要因に関する実証的研究(1)
大岡 敏昭門田 猛則酒井 要
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1992 年 18 巻 p. 85-100

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抄録

 本論文は次の3点を目的としている。第1は,農家住宅における中廊下型への変化の実態を地域別,年代別に明らかにすること。そして,そのような中廊下型への変化の中においても,座敷構成はその地域独自の伝統的構成を現代まで根強く継承している実態を明らかにすること。第2は,中廊下型成立の要因とその歴史的意味を明らかにし,併せて,地域独自の座敷構成継承の意味を考察すること。第3は,以上の課題分析を基に,住宅発展における新しい型の生成プロセスと住生活および住空間の発展の法則性を見出すことにある。そこで,上の目的を明らかにするために,座敷構成の違いから分類した住宅型の異なる4つの地域(山形,福井,大分,宮崎)の21市町村の家屋台帳に記載されている住宅平面(9605戸)を収集し分析した。さらに,併列型住宅が集中的に分布する宮崎県山間部の五ケ瀬町坂狩上集落を対象にして悉皆調査(住宅平面と住生活の変化等)を行なった。その要点は次の通りである。①中廊下型への変化は全国4つの地域とも昭和40年を境に急激に展開している。そして,その地域独自の住宅型(座敷構成)をかなり根強く継承している地域が多い。②中廊下型成立は,それまでの住宅発展の1段階であり,内容は家族生活と接客祭礼の分離法則にある。これは1室型住宅から現代の中廊下型までの発展の基本的論理である。③その地域独自の座敷構成の継承は,新しい「家」の論理に基づいた空間的現象ではないか即ち,現代の農村には近代的な「家族」の論理を強く内包しつつも,一方で,精神的基層としての祖先信仰を前提にした「家」存続の論理が生き続けており,中廊下型はそれに規定された空間的現象と考えられる。

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© 1992 一般財団法人 住総研
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