住宅総合研究財団研究年報
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欠陥住宅の法律問題に関する総合的研究(1)
植木 哲山本 隆司坂東 俊矢今西 康人村本 武志浅岡 美恵石井 修二山川 和雄木村 俊郎
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1992 年 18 巻 p. 209-216

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抄録

 本研究の目的は,欠陥住宅に関わる様々な法律問題を総合的に研究しようとするものである。第1は,住宅の質の問題に関する法解釈学的・法政策的課題を明らかにすること,第2は,第1で明らかにされた課題に対し住宅の流通に関連し問題となる様々な問題点を,主として住宅全融との関わりにおいて比較法的・法解釈学的観点から明らかにすることを目的としている。本研究は,第1に,住宅及び造成地の品質や欠陥に関する実態調査を行なう。これにより主題につき消費者の関心がどこにあるかを知る。本調査により国民の欠陥住宅に関する被害や不満の実状を知り,これに伴う法的課題を析出する。これとの関連において住宅や造成地の欠陥に伴う法的問題点を法解釈学的・比較法的・法政策的観点から検討し,その解決策を評論する。伝統的には,通常の商品取引とは異なった不動産取引における特殊性への法約対策が必要となる。次に,住宅の品質欠陥にまつわる問題点を取り上げ,住宅の瑕疵担保責任,製造物責任,品質鑑定,不当広告と競争制限等に関わる法的問題点と,その紛争防止対策等が重要となる。本調査との関連においては,住宅の欠陥と製造物責任との関係が中心となる。第2に,欠陥住宅(造成地を含む)が販売される場合の問題点,特に融資販売の問題点を詳しく検討する。具体的には住宅ローンの問題であるが,ここでは欠陥住宅の販売に伴う融資責任の帰趨が重要となる。研究方法としてはここでも第1の場合と同じく,実態調査に基づく問題点の指摘と法解釈学的・比較法的・法政策的観点からの解決策を示すことにある。特にこの問題の解決についてはアメリカにおいて大いに発展を見ている法分野であり,アメリカにおける多くの判例を分析するとともに,消費者信用と住宅全融の結合を推進しているドイツの判例を勘案しながら,わが国の問題点を検討する一助としたい。以上の課題を明らかにした後,各々の問題点を分析し,主題に関する法約解決策を示すとともに,わが国におけるあるべき方向について提言を行いたい。

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© 1992 一般財団法人 住総研
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