住宅総合研究財団研究年報
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ロンボク島の都市・集落・住居とコスモロジー
イスラーム世界の都市・集落・住居の形態とその構成原理に関する比較研究
布野 修司応地 利明堀 直坂本 勉金坂 清則佐藤 浩司Joseph PrijotomoSutrisno Murtiyoso
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1993 年 19 巻 p. 105-116

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抄録

 本研究は3つの課題により構成されている。第1は,ロンボク島の住居集落に関する分析である。住居集落はいくつかにパターン分けできるが,バリ人の住居集落を除けば,必ずしも,コスモロジーと形態との強い関係を見ることはできない。島の北部山間部の,従来からの宗教的伝統を保持しているムスリムであるササック族(ワクトゥー・テル)の住居集落の場合,読み取れるのは,住居とブルガ(露台)をペアとする単純で明快な形式である。南部の丘陸部には,等高線に沿って住居が配列される集落が多い。南部のササック族の場合,基本的な住居形式を地形に合わせて配置する,そうした素朴な原理が一般的であるように思われる。第2は,中心都市であるチャクラヌガラの構成についての分析である。チャクラヌガラは,実にきれいな格子状パターンの都市である。バリのカランガセム王国の植民都市であり,その都市理念をモデルとして建設されたと推測される。ヒンドゥーの都市理念に基づいて建設された都市の中でも珍しく全体が残されている。インドを含めてもそう例がないといっていい。中心にはプラ・メルというロンボグ島最大の寺院がある。ここには33の小さな祠があるが,それぞれの祠に固有の名称,さらに対応するプラ(寺院)の名称が併記され,チャクラヌガラの33のカラン(住区)と関係づけられている。プラ・メルはチャクラヌガラの住民にとっての信仰の中心でもあり,かつ,コミュニティ統合のための象徴的な核としても存在している。第3に,プラの構成とオリエンテーションに関する分析が加えられる。興味深いことにヒンドゥーとイスラームの共通の聖地とされているプラがある。基本的に,プラはバリ・ヒンドゥーの影響のもとに建てられているため,オリエンテーションに関してもバリ・ヒンドゥーの概念にしたがう。しかし,崇拝の対象とする山がバリかロンボグかによって,オリエンテーションが異なる例がある。

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© 1993 一般財団法人 住総研
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